「悪人」 吉田修一
2008.01.15



なにげに、
嫌な人だなぁ、と思っている女が、
事件の被害者となるのだけれど、

その父親の「なにがおかしいですか?」
というラストの台詞には、涙が止まりませんでした。
被害者感情に同調したのではなく、理屈なしで子を守る親の本能が美しかったからだけでもなく、
きっと、なにかの縮図。
人間の縮図。
でも、おおげさでなく、 心のモヤモヤの縮図(余計分かりにくいけど)。

世のすっきりしない善悪や裏表、きれいと思っていたものがあまりきれいでもなく、きれいじゃないと思っていたものがホントにきれいじゃなかったり、、、
そんな、
すっきりしない事柄。答えがファジーだったりすること。
そんな漠然としたものが私を覆い、涙を流させたのかもしれません。

ヒット!!素晴らしい!!

はじめ、誰に感情移入すればいいか分からなかったけれど、読むうちに、自分がどの人にも入りこめたところが、ある意味、この本の魅力でしょうか。
タイへ旅立つ飛行機の中で、あっという間に読んじゃった次第。
到着したバンコクは、暑く、「悪人」を読んだあとの体は、気持ちよく汗ばみました。


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